マーケティングにおけるCRO(コンバージョン率最適化)とは?CROの定義や基礎知識を解説
本記事ではマーケティングにおけるCRO(Conversion Rate Optimization)をテーマに基礎知識を解説します。「サービス改善に取り組みたい」「CROの勉強を始めたい」「サービス改善の体系的な方法を模索している」方にとっては、CROの定義や基本的な進め方などの全体概要をキャッチアップできる記事になっています。
CROとは
CROとは”Conversion Rate Optimization”の略で、サイトのコンバージョン率を向上させる一連のプロセスです。
日本語では「コンバージョン率最適化」「コンバージョン最適」と表現されます。サイトのコンバージョン率を向上させることは、すなわちサイト経由の収益機会を向上させることにつながります。このため、CROはサイト経由の収益を最大化させる包括的なプロセスと言い換えることもできます。
一般的にコンバージョンとは「商品購入」「サービス登録」「リード獲得」「課金」「取引」などビジネスに直結するアクションを指します。サイトを訪れた人の中でこのようなアクションの確率を上げることは、すなわちサービスの収益性向上に直結します。CROをリアル店舗に例えるならば、店舗に来店した人の中で買い物をしてくれる人の割合を増やしていくプロセスです。
コンバージョン率(CVR)の求め方
一般的にコンバージョン率は以下の数式で割り出すことができます。セッション数とは「訪問数」とお考えいただけるとよいでしょう。
コンバージョン率(%) = コンバージョン数 / セッション数
セッションにおいてコンバージョンが生じる確率がコンバージョン率です。
なぜCROが大切なのか?
多くのサービスでウェブが主戦場となった現在、自社のウェブサイトに人を集める難易度は飛躍的に高まっています。例えば、オーガニックトラフィックを獲得するためにはSEO観点でコンテンツ投資、サイト構造への投資が欠かせません。全く対策なしに継続的にオーガニック流入を得ることは難しいです。SNSの運用も継続的なリソース投下が必要です。もちろん広告による集客も検索、ディスプレイなど各プラットフォームの運用知見が必須で、かつオークションに参加するライバルも多数います。広告なのでもちろん出稿にコストが発生します。
オーガニックであれ広告であれ、苦労して獲得したトラフィックから最大限価値を引き出すことが、ウェブサービス(サイト)における持続的な成長の鍵となります。逆に、苦労して獲得したトラフィックが、サイトの欠陥が原因で収益に転換しないと危機的な状況にすらなってしまいます。これほどもったいないことはありません。
CROを施すことでサイトの欠陥(=バケツの穴)をふさぎ、より収益性の高いサイトに進化させていくことができます。
CROのメリットとは?
CROの一義的なメリットは、現在のトラフィックからより多くの収益を生み出せることです。そして、それに付随し「広告コストの効率化」「CRMコストの効率化」など様々なコストの合理化につながります。広告を例にとると、前提条件が同じ場合にCVRが2倍になれば獲得単価は2分の1になります。これは、CVRの改善で余分な広告費を投下せずともコンバージョンを獲得できることを意味しますし、同じ広告費でより多くのコンバージョンを獲得できるともいえます。
(参考)CROのメリット
CROは複利運用
CROは一過性ではなく継続的な改善を前提としてます。CROは前回の改善を土台として新たな改善を重ねていくことができます。さながらコンバージョン率の複利運用と言えるでしょう。一般的にサイトのコンバージョン率は一定ということはありません。時期的要素、競合、キャンペーンなど多くの外部変数によっても上下します。オリジナルの状況を1とした場合に、その状況を土台に改善をかけていきます。例えば、毎月1%ペースの改善ができれば1年後はベースCVRが1.1倍、毎月5%ペースなら1年後は1.8倍、万が一毎月10%ペースの改善ができれば1年後は3倍以上のCVRがベースとなります。
「CRO」「LPO」「EFO」それぞれの違いについて
CROと似た文脈で語られる言葉に「LPO」や「EFO」があります。ここで少し整理をします。CROはサイト訪問者の収益性を高めるための包括的なプロセスで、そのプロセスにおいて非常に重要な役割を占めるのがLPO(Landing Page Optimization)やEFO(Entry Form Optimization)です。以下の図が認識しやすいかもしれません。
CROという大きな概念における手法の1つがLPOでありEFOです。サイトの入口でもあるランディングページの改善はそれ単体でも非常に大きなインパクトがあります。ユーザー情報入力の最も肝の場面の改善であるエントリーフォーム改善もまた然りで非常に重要な役割を果たします。
CROのプロセスとは
CROの概念を整理したところでプロセスについて考えていきましょう。CROは、ウェブサイトに変更を加え、その変更がコンバージョン率をどのように増減させるかを測定するプロセスと言い換えることができます。リアル店舗に例えるならば、店舗内装を変えたり、レイアウトを変えたり、値札を変えたり、レジ脇を工夫したり、接客方法を変えたりすることで訪問回数あたりの買い物回数がいかに変化したかを追っていきます。そして、より良い変更を採用していきます。
CROにおけるメジャーなプロセスは上図のように、詳細な分析から課題を抽出し、課題検証を行い、統計的に有意な選択肢を実装していきます。A/Bテストを実施する場合もあります。
CROのプロセスをもう少し具体化してみましょう。
ご参考までに、以下は弊社が提供するCRO特化のマーケティング支援コンサルティング「GrowthFuel(グロースヒュール)」の進行フローです。
詳細な分析から正しい仮説を設計し、その仮説を適切な方法で検証していきます。CRO支援について詳しく知りたい方は是非お問い合わせください。
CROのプロセス – 分析
CROにおいて最も重要と言えるのが分析パートです。分析はCROの土台のようなもので、詳細な分析なくては効果的な仮説を作っていくことができません。最も時間をかけるのがこの分析パートとなります。多くの分析手法がありますが大きく分けると以下3つのアプローチに分解できます。
- 定量分析:ログやデータなど数字をもとにした分析
- 定性分析:インタビューなどユーザーの声をもとにした分析
- ヒューリスティック分析:専門知見を活かした分析
定量分析は、Google Analytics、ヒートマップツール、アイトラッキングなどの解析ツールをベースにサイトコンディションを行うことが一般的です。定性分析は、インタビュー、ユーザビリティテスト、セッションリプレイテスト、レビュー分析などでユーザーインサイトを掴みにいくことが主な目的となります。ヒューリスティック分析は、サイトウォークスルーなどをベースに目視で課題ポイントを抽出します。このように様々な分析を駆使することでサイトが有するCVR観点でのボトルネックを見つけていきます。
CROのプロセス – プランニング(仮説設計)
前プロセスで抽出した課題の事象について解釈を加えていくステップがプランニングとなります。事象に対して、原因、解決策をそれぞれ付与していき仮説リストを作成します。
例えば、USのCRO AgencyのInvespが提唱するSHIPメソッドは課題を「FIX RIGHT AWAY」「INSTRUMENT」「RESEARCH OPPORTUNITY」「INVESTIGATE FURTHER」の4つのグループに振り分けることで施策リストを仕上げていきます。
施策リストの優先順位に対する考え方にもICEモデルやPIEモデルなど様々なフレームワークがあります。例えば、ICEモデルでは、影響力(Impact)、確信度(Confidence)、容易さ(Ease)という3つの要因に対して、スコアリングを行うことで、優先度を決めます。
各種プロコンはあるものの「実行が容易で、インパクトが大きく、改善幅が期待できる」課題の優先度を高めることがCROの定石といえます。
CROのプロセス – プロトタイピング
前プロセスで課題と解決の指針リストが完成しました。これらのリストの上から実際に改善作業を進めていきます。A/Bテストを行う必要がある場合は、プロトタイプを制作します。ファーストビュー、フォームなど仮説検証をするためのパーツを制作します。
CROのプロセス – 実行(A/Bテスト)
CROの実行プロセスの主流がA/Bテストです。A/Bテストは、複数のバージョンを比較検証して、統計的にパフォーマンスが高い方を採用するプロセスです。スプリットテストとも呼ばれます。
なぜA/Bテストが必要なの?
なぜA/Bテストを行う必要があるのでしょうか?良いと思うものを実装するのではだめなのでしょうか?
一般的にサイト変更を施した場合、それが実際に好影響を与えるかどうかはフタを開けてみるまでわかりません。例えば100万人が訪れるサイトで変更が失敗とわかった場合、負の影響は甚大なものになります。事後にバージョンを戻すこともまた至難の業です。
A/Bテストを活用することで、テスト対象1,000人の観察から、次に訪れる100万人の動きを高い精度で予測することができます。少ない労力で高い精度でリターン予測できる点でA/Bテストは非常に価値あるものとなります。
A/Bテストツールを活用する
A/Bテストについては、ツール活用が現在の主流です。A/Bテストは「様々なパターンをルールにしたがってユーザーに出し分けを行い管理する」必要があります。ツールを使わずにこのような開発を行うことは一般的にとてもコストがかかりますが、A/Bテストツールを活用すれば、このような出し分けやパターン実装がローコード(場合によってはノーコード)で実行できるため非常にメリットが大きいといえるでしょう。
主なA/Bテストツールは無料で使えるGoogleオプティマイズが主流です。他にも、グローバルではOptimizely、VWOが支持が高いツールですし、国内ではPtengineなどのツールも人気です。
主なA/Bテストツール
- Googleオプティマイズ
- Optimizely
- VWO
- Ptengine
よくあるA/Bテストの落とし穴
A/Bテストはあくまで課題解決のための検証手段です。テストによってどのような結果を期待するか事前にシミュレーションを行う必要があります。シミュレーションを行わないままに見切り発車でテストを行った場合、テストではポジティブでも実際の環境ではネガティブとなるケース(あるいはその逆)が多々あります。この場合、テストそのものが意味のないものとなってしまいます。
A/Bテストのサンプル数は十分か?
サンプル数の大小はテスト期間やテスト精度に大きく影響します。サンプル数が不十分だとテストが成立しません。対象ページのセッション数、対象ページ経由のCV数、そしてCVRをもとに必ずシミュレーションをしましょう。
A/Bテストの勝敗を何で判断するか?
「A/Bテストの勝敗をいつ判断するのか」は非常に重要な要素です。よく陥りがちが罠となりますが、統計的観点を無視して、期間経過だけでテスト結果を判断することはおすすめしません。
- 期間:少なくとも2ビジネスサイクル以上(=2週間)。
- MDE(minimum detectable effect):最小検出可能効果
- 有意差:統計的に有意な差が出ている(検出力90%, 有意水準5%)
A/Bテストに統計知識は必須ではありますが、シミュレーションに工数をかけたくないですよね。ABtestguide.comなどテストシミュレーションが簡単にできる無料ツールがあるのでうまく活用しながらテスト設計をしましょう。
CROのプロセス – ポストテストアクション
A/Bテスト後のアクションは非常に重要です。テストはギャンブルではありませんので、仮にテストで有意な勝敗が出なかったとしても、テスト結果によって常に新しい示唆を得ることが可能となります。テスト結果は洞察も含めて必ずアーカイブしていきましょう。
分析からポストテスト分析に至るこのようなサイクルをまわしながらCROはプロセスを進めていきます。
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