CROやABテストで使えるコンバージョンマーケティングのフレームワーク集
CRO(コンバージョン率最適化)に代表されるコンバージョンマーケティングをより効率的に実施したいとお考えの場合に役立つフレームワークを紹介します。本記事ではコンバージョンマーケティングで活用機会の多い「コンバージョンヒューリスティックモデル」「SHIP理論」「LIFT」「ResearchXLモデル」「PIE」」「ICE」「ユーザビリティ原則」「フォッグ行動モデル」「FACT&ACT」「JTBD」について紹介します。
コンバージョンヒューリスティックモデル
コンバージョンヒューリスティックモデルは、どのファクターがコンバージョン率に影響するかを表現したモデルです。コンバージョンマーケティングにおいて参考にされることの多いモデルの1つです。コンバージョンヒューリスティックモデルではコンバージョン確率を以下の数式で表現しています。
C = 4M + 3V + 2(I – F)-2A
- C:コンバージョン確率
- M(Motivation):ユーザーのモチベーション
- V(Value Proposition):サービスのバリュープロポジション(=提供価値)
- I(インセンティブ):提供価値とは異なるユーザーへのインセンティブ要素。オファーなど。
- F(Friction):商品・サービス購入までのハードルの高さ。
- A(Anxiety):購入にまつわる不安、リスク感情
コンバージョンヒューリスティックモデルでは、コンバージョンに最も影響の大きいファクターはユーザーモチベーションです。サービスの提供価値以上にユーザーニーズがあるかどうかがコンバージョンにとって重要です。
コンバージョンによって最も理想的なのは「ユーザーニーズをとらえており、そのサービスを買う理由が明確で、サービスを買うためのハードルよりもインセンティブの方が強く、サービス利用に際しての不安や不明確さが解消されている状態」です。自社のサイトやサービスがコンバージョンヒューリスティックモデルの観点でコンバージョンされやすいコンディションかどうか確認してみるとよいでしょう。
(参考)MECLABS
SHIP理論
(Invesp)
SHIP理論はアメリカのCRO AgencyであるInvespが提唱するCROの実践フレームワークです。CROのプロセスを「課題精査」「仮説設計」「実装」「展開」の4ステップに分けて、各ステップごとに明確なアクションを定義しています。CROのプロセスイメージがわきにくい場合は是非ご参考にしてみることをおすすめします。
- Scrutinize:課題精査
- Hypothesize:仮説設計
- Implement:実装
- Propagate:展開
参考:Invesp.com
LIFTフレームワーク
(widerfunnel)
LIFTフレームワークはUSのCROエージェンシーwiderfunnelが提唱しているコンバージョン率を高めるためのモデルです。このフレームワークでは、コンバージョン率に影響を与える要素として、バリュープロポジションを掲げています。関連性と明確さがコンバージョンを高める一方で、不安や集中分散がコンバージョン率の低下させます。コンバージョンリフトを促進するファクターとして緊急性による動機付けを挙げています。
- バリュープロポジション:サービスが提供する価値。サービスを利用する理由
- 関連性:訪問者のニーズに関連しているか
- 明確さ:バリュープロポジションとコールトゥアクション(CTA)を明確に表現しているか
- 緊急性:訪問者が今すぐ行動を起こすべきと受け取る表示はあるか
- 注意力散漫:訪問者をゴールから遠ざけるような余計な情報はないか?
- 不安:訪問者が感じる不安を取り除く要素はあるか
(参考)widerfunnel.com
ResearchXLモデル
(ConversionXL)
ResearchXLモデルはコンバージョンマーケティングのコンサルティング会社CXLが提供するリサーチフレームワークです。CROにおいてユーザーインサイトを特定するためにどのような調査を実施するべきかを可視化したフレームワークです。以下7つのリサーチ要素から構成をされています。
- ヒューリスティック分析:「Clarity」「Friction」「Anxiety」「Distraction」観点でのサイト評価
- マウストラッキング分析:マウストラッキングやセッションリプレイによる評価
- Web解析:Google Analyticsを使った調査
- ユーザーテスト:ユーザーの操作調査
- コピーテスト:コピーライティングのテスト
- 定性調査:アンケートやインタビューなどによる調査
- 技術調査:バグ、ページスピードなどサイトの技術的パフォーマンス評価
(参考)cxl.com
PIEフレームワーク
(widerfunnel)
PIEフレームワークは調査結果から改善施策の優先順位付けを行うフェーズで活用されるフレームワークです。Potential(ポテンシャル)、Importance(影響度)、Ease(実施の容易さ)という3要素でスコアリングを行い施策の優先度を付けます。基本的には改善ポテンシャルが大きく、サイトにおける影響も大きく、実施が簡単(技術的にも政治的にも)な施策が上位に来やすくなります。
- Potential:改善幅があるか。
- Importance:影響が大きい要素か。
- Ease:実施ハードルは低いか
(参考)widerfunnel.com
ICE
PIEフレームワークと同様に優先順位づけに活用されるフレームワークがICEです。EはImpact, Confidence, Ease of implementationの頭文字で、施策のインパクト、成功確度、実装の容易さの項目でスコアリングする手法です。施策の成功確度を主観的な観点で評価している点がICEフレームワークの特徴です。
- Impact:施策のコンバージョンに与えるインパクト
- Confidence:施策が成功する確度。主観的な確信。
- Ease of implementation: 実装の容易さ。
(参考)ladder.io
ニールセンのユーザビリティ10原則
ニールセンのユーザビリティ10原則はユーザビリティの第一人者であるヤコブ・ニールセン博士が提唱したWebサービスのユーザビリティに関する原則です。ニールセン博士のユーザビリティ10原則は長きにわたって良いWebサービスの参考にされてきました。もちろんCRO(コンバージョン率改善)における示唆も多くサイトユーザビリティ分析の際はおおいに参考になる内容となっています。
- Visibility of system status – システムステータスの可視化
- Match between system and the real world – 実世界とシステムをマッチさせる
- User control and freedom – ユーザーに主導権と自由を与える
- Consistency and standards – 一貫性と標準性を保つ
- Error prevention – エラーを事前に防ぐ
- Recognition rather than recall – 覚えなくても認識できるようにする
- Flexibility and efficiency of use – 柔軟性と効率性をもたせる
- Aesthetic and minimalist design – 最小限で無駄のないデザインにする
- Help users recognize, diagnose, and recover from errors – ユーザーでエラー認識、診断、回復できるようにする
- Help and documentation – ヘルプとマニュアルを用意する
(参考)Wikipedia
Fogg Behavior Model | フォッグ行動モデル
フォッグ行動モデルはスタンフォード大学のPersuasive Technology LabのBJ Fogg博士が提唱するモデルです。フォッグ行動モデルでは、ユーザーがアクションを起こすために、モチベーション、能力、促進の3つの要素が同時に揃わなければならないと説明しています。このモデルはサイトのユーザビリティ改善の文脈で扱われることが多く、操作ユーザーの動機付け(インセンティブ要素)やリテラシーに合わせた操作性、そしてトリガーとなる適切なCTA(コールトゥアクション)の検証に用いられます。
Behavior = Motivation x Ability x Prompt
(参考)Stanford Behavior Design Lab
FACT&ACTモデル
(ONLINE DIALOGUE)
FACT&ACTモデルはCRO AgencyであるONLINE DIALOGUEが提唱しているA/Bテストのためのフレームワークです。7つのファクターの頭文字をとってFACT&ACTモデルとして説明しています。モデルの内側のトランザクショナルフェーズでは、テストPDCAを回すフェーズです。真ん中のインフォマーシャルフェーズでは、トランザクフェーズフェーズでたまったテストラーニングをもとに、情報を組み合わせてより高次の仮説を作っていきます。外側のトランザクショナルフェーズでは前フェーズで得られた顧客インサイトをもとにビジネス構造を変革していくより影響の大きいフェーズとなります。
- Find:カスタマージャーニーを観察する。
- Analyze:調査にもとづいて行動分析を行い。仮説を出す。
- Create:仮説に基づいたテスト設計をする
- Test:テストをする。
- Analyze:テスト結果をもとに分析する。
- Combine:仮説に関するインサイトと結果を組み合わせる
- Tell:適切にシェアして展開をしていく
(参考)A/Bテストの基礎知識
JTBT(Jobs-To-Be-Done)理論
(Intercom)
Jobs To Be Doneの頭文字であるJTBTは顧客がなぜその商品やサービスを採用するのかを説明するためのフレームワークです。JTBTはハーバード・ビジネス・スクールから生まれた理論で「顧客には(商品を通じて)成し遂げたいニーズがある。そして、生活をよりよくするために商品を雇う」という考えに基づいています。どのような商品にも「機能的」「感情的」「社会的」という3つのジョブの次元があり、それらを可視化することで顧客のインサイトを分析できるというものです。
- 顧客が商品を購入する理由の機能的側面
- なぜ商品を購入するのかという社会的/感情的側面
- プロセスマップ: 採用の際にユーザーが辿る様々なステップ
JTBDの分析により、サービスのメッセージングやポジショニングの改善アイデアを抽出することが可能になります。
(参考)invespcro.com
まとめ
本記事ではCRO(コンバージョン最適化)領域で活用されている主要なフレームワークをご紹介しました。各フレームワークは独立したものではありますが、それぞれを観察すると共通点も多くコンバージョン改善に通ずる本質的な要素を見出すことができそうにも思えます。各フレームワークの主旨を掘り下げながら、実務における効果的な活用を探っていきましょう。
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